イージスシステムって何ができるの?弾道ミサイルの迎撃は?
イージス艦のイージスシステム(Aegis System)とは?
防空戦闘を重視して開発された艦載武器システムです。
アメリカ海軍によって開発されました。
日本にはこのイージスシステムを搭載した護衛艦(イージス艦)が6隻配備されています。
海洋国である日本の防衛の要となる兵器です。
正式名称は?
正式名称は「イージス武器システムMk.7(AEGIS Weapon System Mk.7)」です。
頭文字をとって「AWS」と呼ばれます。
名前の由来は?
ギリシャ神話の最高神ゼウスが娘アテナに与えたという盾の名前「アイギス(Aigis)」が由来です。
「神の盾」=対空防御力が凄いという事です。
どこで開発されたの?
開発したのはアメリカです。
日本はアメリカからお金を出して購入したわけです。
ヨーロッパの方でも独自のミサイル防衛システムを開発して配備しているようですが、「イージスシステム」と呼ばれているものはアメリカのシステムです。
他のシステムと比較して、アメリカのイージスシステムは段違いに性能が良いです。
特徴は?
とにかく対空戦闘に秀でている点です。
航空機や対艦ミサイルでの攻撃を防御できます。
特筆なのは、100以上の目標を同時に探知、追跡できること。
そして、脅威の度合いが高い10以上の目標を同時に迎撃できることです。
同じイージスシステムでも最新のものになるにつれて目標数や同時迎撃数が大きくなります。
さらに最新のイージス艦は弾道ミサイルの迎撃もできます。
弾道ミサイルが一番高い所(大気圏?)に達し、落下し始める辺りを迎撃するようです。
日本のイージス艦にも搭載されており、何度か迎撃実験もやっています。
演習では失敗例もありますので、絶対成功するわけではありません。
どうやって防御するのか?
防御というのは、基本的に迎撃ミサイルでの迎撃です。
イージス艦の特徴は、対空戦闘に秀でている部分です。高性能レーダーで捜索・探知を行い、コンピューター自動処理で対空ミサイルシステムを制御できます。
洋上での対空防御や対艦防御を行うわけですが、最新のイージス艦には弾道ミサイルの迎撃という重要な役割もあります。
イージス艦にも得手不得手があります。
敵の軍艦や航空機、潜水艦、弾道ミサイルなどいろいろな相手がいますのでそれに合わせて、ヘリコプター護衛艦や対潜ヘリなどと情報共有しながら、結界を張るようにして協力して戦うわけです。
弾道ミサイルが飛んだ来たらイージス艦にしか迎撃できないのでそこへ注力します。
周りの護衛艦は役割分担しながらその他の脅威に対応するわけです。
ですので、通常は艦隊を組んで行動します。
そして、艦隊の中の要となるのがこのイージスシステムを搭載したイージス艦です。
価格は?
イージスシステム全体(護衛艦は別でシステムのみ)で500億円位だそうです。
東京都の待機児童の為の保育園整備支援にかける予算と同じ程度です。
そう考えると、税金の使い道や配分の優先順位としてはどうなんだろうと色々考えてしまいますね。
想定する相手(敵国)は誰?
中国と北朝鮮です。
中国の海洋進出のけん制と、北朝鮮の弾道ミサイルの防御のための装備です。
しきりに弾道ミサイルの発射実験をやっている北朝鮮ですが、最近は性能も精度も上がってきているようです。
ミサイル迎撃の成功確率は?
対艦ミサイル等は、せいぜい時速数百キロで横に飛ぶミサイルですから余裕で迎撃できます。
問題は弾道ミサイルです。
弾道ミサイルの着弾時のスピードは、小型の物でも時速6,000Km以上の猛スピードです。
大型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)は時速25,000Km以上です。
そんなスピードで真上から落ちてくるミサイルを破壊するのは至難の業です。
これが弾道ミサイルの最大の特徴です。
迎撃がものすごく困難なのです。
弾道ミサイルの迎撃には2つの方法があります。
イージス艦から発射される「SM-3ミサイル」と、地上配備の「パトリオットミサイル(PAC3)」です。
イージス艦での弾道ミサイル迎撃(スタンダードミサイル SM-3)
弾道ミサイルは放物線を描いて飛んでいって落下します。
要は石ころを遠くに投げるのと同じです。
頂点まで達したら、あとは自由落下です。
イージス艦から発射されたSM-3は、敵国から発射された弾道ミサイルがこの頂点付近に達したところを迎撃します。
頂点はどこかというと、大気圏の外の宇宙空間です。
弾道ミサイルのスピードが一番遅い段階で破壊するので、成功確率も高まります。
成功確率は80%台~90%台と言われているようです。
10回に1回失敗するかどうかって感じですね。
でも演習はあくまでも演習です。
予め指定された時間帯に限られた範囲の中で迎撃する練習です。
しかし実戦は状況が違います。
実戦では「今から弾道ミサイルを打ちますよ!」というアナウンスはありません。
また、「ここから打ちますよ!」とも言いませんし「どこを狙いますよ」とも言いません。
同時に何発撃つかもわかりません。
北朝鮮は移動式の発射台から発射できますし、2016年8月時点ではSLBM(潜水艦から発射する弾道ミサイル)でも500kmの飛翔に成功したようです。
いろんな場所から打てるわけです。
迎撃の成功のためには予め発射台の準備の兆候を察知したり、潜水艦の動向を察知したりとそういったところから既に駆け引きが始まっています。
衛星や早期警戒機(航空機)やイージス艦がこれらの兆候をみつける事が出来て初めてミサイルでの迎撃体制に入るわけですから、この最初の兆候を把握できるかが重要です。
MIM-104 地対空ミサイルシステムでの弾道ミサイル迎撃(ペトリオットミサイル PAC-3)
パトリオットとかペトリオットとか呼ばれていた地対空ミサイルです。
イージス艦で迎撃できなかった弾道ミサイルが落下をし始めた後に迎撃する最後の砦です。
地上配備型の弾道ミサイルの迎撃にはPAC3とよばれるものが使われています。
迎撃の成功確率はざっと60%程度のようです。
といってもこれも演習での迎撃実験の結果です。
PAC3の発射台は自動車なので自走して移動することができます。
しかしその射程(守備範囲)は20km~35km程度です。
予め弾道ミサイルの落下時点に配備されていないと意味がありません。
じゃあ急いで移動すれば間に合うか?という疑問が出てきますが、おそらく無理です。
予め配備されば場所を守るだけであって、弾道ミサイルが発射されたから移動していたのでは間に合いません。
なぜって?
大陸間弾道ミサイルは文字通り大陸間を飛んでいきます。
北朝鮮からアメリカまで30分程度で飛んで行って着弾します。
太平洋をたった30分で横断するわけです。
ちなみに北朝鮮から日本に向けて発射されるであろう弾道ミサイルは準中距離弾道ミサイル(MRBM)です。
名前でいえば「ノドン(火星7号)」です。
数百発は保有しています。
ノドンが発射されたら7~8分で日本に着弾します。
発射されてから着弾地点に移動を始めても・・・無理ですよね。
精強な自衛隊員ならできるんじゃないかって?
たしかに。
もし私だったら、途中でパトリオットミサイルごと事故るでしょうね。
もしくは慌てすぎて発射手順をど忘れしそうです。
そう考えると、自衛隊員にかかるプレッシャーは半端ないでしょうね。
最後に
イージスシステムについて色々話しましたが、伝わりましたでしょうか?
ちなみに佐世保港には6隻のイージス艦の半数が配備されています。
アメリカ海軍基地だってあるから、何かしらの備えもあるでしょう。
ですから長崎県は弾道ミサイルに強い県です!
北朝鮮の弾道ミサイルが心配な方は長崎県佐世保市に住めば安心です。
「えっ、狙われやすい?」
そんなあなたには、佐世保からちょっとはなれた松浦市辺りがいいかも?
ではまた!
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