水陸機動団【相浦駐屯地】とは?西部方面普通科連隊を中心に新設!
陸上自衛隊に新設される水陸機動団についてです。
この水陸両用部隊は、島嶼部での有事の際には真っ先に現場に駆けつける事になります。
日本版海兵隊ともいわれています。
一体どこにあるどんな部隊なのでしょう。
調べてみました。
「司令部」と「第1連隊」は、相浦駐屯地に置かれる!
長崎県佐世保市にある相浦駐屯地に司令部が置かれます。
また、水陸機動団の中心となる第1連隊も相浦駐屯地に駐屯します。
この相浦駐屯地は、既に現在も水陸機動団の中核を担う「西部方面普通科連隊」が駐屯しています。
さらに崎辺地区に水陸両用車部隊用の車両基地も新設されます。
佐世保市の陸上自衛隊施設全体が拡張・増強される形です。
以下の記事でも触れています。
佐世保重工が所有地売却へ、陸自水陸機動団用地に
規模について
水陸機動団の規模はこんな感じになる予定です。
隊員数:2,000名~3,000名。
装備 :水陸両用車(AAV7)を52輌導入予定。
平成27年2月9日 富士駐屯地(静岡県)でのAAV7公開の様子(陸上自衛隊HPより)
どうやって編成するの?
現在、佐世保市の相浦駐屯地に駐屯している「西部方面普通科連隊」を中心に改編されます。
西部方面普通科連隊とは?
2002年3月に新編された長崎県の相浦駐屯地に駐屯している舞台です。
自衛隊で唯一の水陸両用部隊です。
方面隊直轄の部隊
通常の部隊は、各「方面隊」の中の「○○師団」の指揮下に存在しています。
ですが、この「西部方面普通科連隊」は違います。
読んで字のごとくですが、「西部方面隊」に直属する「普通科連隊」です。
会社でいえば係長の下にいる平社員ではなく、部長あたりから直接指示を受ける特別な社員ですね。
テレビドラマの「特命係長・只野仁」みたいな感じでしょうか?
隊員数は?
隊員数は660名程度です。
特徴・訓練・特殊能力など
この部隊の隊員はほとんどがレンジャー資格を持っている。
そして「水路潜入訓練」なども行っています。
海岸から10km程度離れた沖合いからゴムボートにて水路潜入する訓練や、ヘリコプターから投下されるヘリボーン訓練なども行います。
米軍との上陸演習「アイアンフィスト(鉄拳)」に毎年参加。
西部方面普通科連隊は頻繁に海外での訓練に派遣されます。
2005年以降は毎年1月に参加しております。
2015年のアイアンフィスト
1月26日に演習開始となりました。
西部方面普通科連隊は280名が参加。
米海兵隊(第13海兵遠征部隊)は500名が参加しています。
また、2013年6月米国における統合訓練(ドーン・ブリッツ13)に参加。
水陸機動団は日本版海兵隊
上記からわかるように、西部方面普通科連隊は日本版海兵隊です。
といってもアメリカの海兵隊のように他国に上陸して作戦を行うわけではありません。
敵に制圧された自国の島を奪還する目的での上陸作戦です。
作戦の内容としては、海兵隊と同じような事ですよね。
日本は島国なので、他国に攻められるとしたらまずは島です。
中国や韓国ともめる場合も、必ず島の帰属に関する事項ですよね。
島嶼部防衛のカギとなるこの部隊は、まさに日本の防衛の要です。
そしてこの部隊をもとにして新たなる「水陸機動団」が設立されるわけです。
水陸起動団の第1連隊(相浦駐屯地 佐世保)の隊員数は?
いろいろな情報を見ると、新設される「水陸機動団」の規模は3,000人程度のようです。
また、「第2連隊」と「第3連隊」の人数がそれぞれ800名程度という事です。
なので主力となる佐世保の「第1連隊」は1,400名と考えられます。
隊員が足りない?引っ越してくる?
現在の「西部方面普通科連隊」は660名程度です。
水陸起動団の第1連隊を編成するには740人の隊員が不足します。
どこかの部隊から佐世保の相浦駐屯地に移動してくることになると思われます。
先日の記事でも書きましたが、相浦駐屯地付近に190戸の宿舎を確保する予定のようです。
水陸機動団 2017年度末までに佐世保に宿舎190戸
水陸起動団の陸上総隊への編入
「水陸機動団」は今後新設される「陸上総隊」の編成に組み込まれる予定です。
方面隊直下から防衛大臣直下へ!
現在の「西部方面普通科連隊」は「西部方面隊」の直轄部隊ですが、「水陸機動団」は「防衛大臣」直轄の部隊になります。
尚、現在も大臣直轄の部隊である「中央即応集団」も陸上総隊に編入されます。
ですので、以下のような部隊が陸上総隊のメイン部隊になりそうです。
◆第1空挺団
◆第1ヘリコプター団
◆水陸機動団
なんだか、相浦駐屯地の部隊がどんどん出世しているみたいな感じですね。
再精鋭部隊が集まったエリート集団ですね。
いずれの部隊も戦闘の最前線に真っ先に駆けます。
敵の背後に隠密に潜入(投下)されたり、海の沖合から気づかれずに島に上陸したりして、見方に情報を送ります。
敵に制圧された地域に潜入して、島を奪還するための最重要な作戦を遂行する訳です。
最も勇気の必要な、そして優秀な部隊なわけですね。
空挺部隊も上陸部隊も危険極まりない任務です。
映画「プライベートライアン」の冒頭部分を思い出します。
初めて見た時は衝撃的でした。
水陸機動団。
まさに「心・技・体」が揃っていないと務まりませんね。
私には・・・絶対ムリですね。
水陸起動団の内部編成
水陸機動団の内部編成は以下の要領で編成される予定です。
司令部は相浦駐屯地(長崎県佐世保市)
メインである第1連隊が駐屯する相浦駐屯地が司令部となります。
3個連隊で構成される。
メインは第1連隊です(佐世保)。
◆第1連隊(佐世保)。
◆第2連隊(700名~900名)。
◆第3連隊(700名~900名)。
各連隊は4つの中隊で構成。
作戦遂行の1単位となる各連隊には以下の中隊で構成されています。
◆本部中隊
◆AAV中隊
◆ヘリボーン中隊
◆ボート中隊
本部中隊ヘリボーン部隊やボート中隊に水路潜入を指示し、潜入が成功したら情報をもとに上陸ポイントを決定してAAV(水陸両用車)を上陸させていくわけですね。
各中隊の特徴
各中隊の役割をもう少し細かく見ていきます。
本部中隊
他の連隊や司令部との連絡、現場での作戦遂行に関わる部隊でしょう。
ヘリボーン中隊
先遣部隊として、第一空挺団が空からパラシュートで敵の背後に投下されるのに対して、水陸機動団の場合は沿岸の沖合い数キロあたりの海上にキャスティング(飛びこむ)され、水路から潜入するようです。
闇夜に紛れ、敵がいない上陸地点を探して音もなく上陸し、偵察・報告を行う部隊です。敵の占領した島に最初に上陸するわけですから、当然、最精鋭部隊です。
他に、ヘリコプターから陸上へロープを使って降下する部隊もいるようです。
この場合は、先遣部隊が上陸地点を確保した後なのではないでしょうか。
ボート中隊
ゴムボートに5~6人が乗り、身を伏せてビーチから上陸する部隊です。
ゴムボートは「しもきた」などの大型輸送艦で運ばれます。
先遣部隊に次ぐ上陸部隊なのでしょう。
AAV中隊
アメリカより購入予定のAAV7(水陸両用強襲輸送車7型)にて海上より上陸し、展開する部隊です。52輌導入予定です。
AAV7はLCAC(エルキャック)と呼ばれるエア・クッション型揚陸艇に搭載され、さらに大型輸送艦に積載されて、目的の海域まで運ばれるようです。
AAV7には重機関銃も装備されていますが、あくまでも輸送車ですから、目的としては、「ボートよりも装甲に守られた状態で効率よく隊員を上陸させる」ことなのではないでしょうか。
どちらにしても、水路潜入した先遣部隊が上陸地点を確保してからの上陸となると思います。何しろ音もうるさいので、敵に見つからず上陸は出来ないと思います。
水陸機動団の3つの連隊のそれぞれに何台が配備されるかは分かりません。しかし、佐世保の崎辺地区に水陸両用部隊の基地が出来る事を考えると、相当数が佐世保の第1連隊に配備されるのではないでしょうか。
AAV7(水陸両用車)の特徴
水陸起動団の為に、アメリカから購入する水陸両用車です。
◆搭載可能量(1台):乗員3名+隊員25名(貨物なら4トン)
◆走行速度(地上):72km/h
◆航行速度(海上):13km/h
◆武器
・M2重機関銃
・Mk19自動擲弾銃
陸上なら早いです。
でも海だと航行速度が13km/hと劇的に遅いです。
かなり近くまで運んでもらわないと、なかなか上陸できませんよね。
水陸機動団の運び方
水陸機動団の隊員や水陸両用車(AAV7)の島嶼部までの移動や上陸には、海上自衛隊や航空自衛隊との連携が必須です。
ではどうやって運ぶのでしょうか?
どこまで運ぶ想定か?
勝手に決めつけて申し訳ないですが、戦闘の舞台として一番イメージしやすいのは尖閣諸島ではないでしょうか?
場所は沖縄本島と中国本土の中間あたりです。
それぞれの距離は以下の通りです。
日本内陸から尖閣諸島
長崎県佐世保市(相浦駐屯地)からは、直線距離で南西に1000km位行ったところです。
沖縄県から尖閣諸島
沖縄県の那覇から西に500km程度の場所です。
沖縄県の石垣島や与那国島の北100キロあたりに魚釣島があります。
中国、台湾から尖閣諸島
ちなみに中国の福州市からは500km程度です。
さらには台湾の台北からだと100km位です。
隊員の上陸方法
水陸機動団の隊員は、以下のような形で島に上陸するようです。
◆ヘリコプターで運び、陸地に投下。
◆ヘリコプターで運び、沖合に投下。泳いで上陸。
◆沖あいからゴムボートで接近し、そのまま上陸。
◆水陸両用車(AAV7)に乗り海から上陸。
ヘリコプターはどうやって運ぶ?
作戦に投入されるヘリは「CH-47JA」や「AH-64D」です。
◆「CH-47JA」・・・通称チヌーク。輸送用ヘリコプター。
◆「AH-64D」・・・通称アパッチ。攻撃用ヘリコプター。
これらのヘリコプターは「ひゅうが」に搭載されて輸送されます。
「ひゅうが」はヘリコプター搭載護衛艦です。
※「ドーン・ブリッツ2013」にはCH-47JA(2機)、AH-64D(2機)が「ひゅうが」に搭載されて派米されました。
沖合数百キロ程度の場所で、ヘリコプター護衛艦から離陸し、隊員を載せて上陸ポイントの沖合まで移動するのでしょう。
ちなみに、大型でタンデムローターの「CH-47(チヌーク)」系の輸送ヘリでも時速240km/h程度で巡航できます。
アパッチならもっと早いです。
数百キロ離れていても、ヘリコプターなら迅速に隊員を輸送することが可能ですね。
水陸両用車はどうやって運ぶ?
一番問題なのは水陸両用車(AAV7)です。
AAV7の海での航行速度は時速13km/h程度です。
さすがに遅すぎます。
なので、AAV7は上陸ポイントの近くまでLCACと呼ばれる大型ホバークラフト艇で運びます。
LCACはどうやって運ぶ?
運ぶことが出来るのは「おおすみ型輸送艦」です。
現在3隻就役しています。
◆おおすみ(1998年就役)
◆しもきた(2002年就役)
◆くにさき(2003年就役)
それぞれがLCACを2艇搭載しています。
「おおすみ型輸送艦」の数が不足している。
AAV7は52輌調達予定です。
現状の輸送能力でどれくらい運べるか計算してみましょう。
現状、一度に運べるAAV7の車輌数は?
1艇の「LCAC」に4輌の「AAV7」が積載可能です。
1隻の「おおすみ型輸送艦」に2艇の「LCAC」が積載できます。
「おおすみ型輸送艦」は全部で3隻保有しています。
という事でAAV7は24輌しか運べません。
輸送艦の床が滑る不具合あり!
さらには、床がすべるなどの不具合があります。
おおすみ型輸送艦3隻とLCACの床の改修が必要らしいです。
逆に言うと改修されれば、輸送艦からの出入りがスムーズに出来るようになるみたいです。
輸送艦というより揚陸艦としての機能を強化する必要があるようですね。
さらにはオスプレイの着艦も出来るように改修しているみたいです。
ただ、どう考えても輸送艦の数が足りないのは致命的です。
ここらへんをどうするのでしょうか。
佐世保を母港にしている米海軍のボノム・リシャールに手伝ってもらえば効率よく運べそうですね。
最後に
また、色々分かったら記事を書こうと思います。
ちなみに大きなシナリオである島嶼部に奪還全体についての流れは、以下の記事が参考になると思うので、ご覧ください。
ではまた!
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