イージス艦とは?弾道ミサイル迎撃の砦!【佐世保に3隻】
イージス艦って何?
最近よく耳にする海上自衛隊の「イージス艦」という言葉。
よく分からない方の為に簡単に説明します。
※2015年7月現在の情報です。
「イージス艦」は通称。
護衛艦の一種である
「イージス艦」とは「護衛艦」の一種です。
(日本では戦艦を護衛艦と呼びます)
「イージスシステム」を搭載した護衛艦
「イージスシステム」を搭載した「ミサイル護衛艦」のことを「イージス艦」と呼びます。
日本では、現在6隻が就役中です。
護衛艦とイージス艦の関係
護衛艦は47隻就役中!
海上自衛隊では護衛艦が47隻就役しています。
護衛艦は4種類に分かれる
日本で就役中の護衛艦は以下のとおりです。
- ヘリコプター護衛艦×4隻
- ミサイル護衛艦×8隻
- 汎用護衛艦×29隻
- 乙型護衛艦×6隻
「ミサイル護衛艦」は対空防御を担う
特に対空防御に優れた護衛艦を「ミサイル護衛艦」として区別しています。
現在、ミサイル護衛艦は8隻、就役しています。
- はたかぜ型×2隻
- こんごう型×4隻
- あたご型×2隻
最新の「ミサイル護衛艦」6隻はイージスシステムを搭載
「こんごう型」と「あたご型」のミサイル護衛艦には「イージス・システム」が搭載されています。
この6隻のミサイル護衛艦を指して「イージス艦」と呼びます。
イージス・システム(Aegis System)とは?
アメリカ生まれの艦載防空システム
防空戦闘を重視して開発された艦載武器システムです。
アメリカ海軍によって開発されました。
高性能レーダー
高性能なレーダーやコンピュータ、対空ミサイルなどが連携して制御され、数多くの目標に対して、同時に対処できるシステムです。
簡単に言えば、何発も飛んできた敵のミサイルを、こちらのミサイルで打ち落とせるいっぺんに打ち落とせる武器です。
10以上の目標を同時迎撃可能
イージスシステムは、100以上の目標を捕らえて追跡し、10以上の目標を同時に迎撃(要撃)できる能力があります。
以前は2つ程度しか相手に出来なかった
以前の武器システムでは、同時に2つ程度の目標(航空機やミサイル)にしか対処できませんでした。
スタンダード対空ミサイル(SM-2)で迎撃
迎撃にはスタンダード対空ミサイル(SM-2)が用いられます。
航空機やミサイルには、このSM-2で対抗し迎撃します。
弾道ミサイルはSM-3で迎撃
イージスシステムには「弾道ミサイル防衛(BMD)」の機能も付加できます。
こんごう型はすでに改修済み
こんごう型イージス艦(4隻)にはすでに改修が終わり、「弾道ミサイル防衛(BMD)機能」が付加されています。
あたご型も改修予定
最新のあたご型イージス艦2隻にも「弾道ミサイル防衛(BMD)」を付加予定です。
弾道ミサイル迎撃実験(SM-3)について
ハワイ・カウアイ島沖にて弾道ミサイルの迎撃実験の結果です。
SM-3発射試験の結果
「こんごう」 | 平成19年12月18日 | 成功 |
「ちょうかい」 | 平成20年11月20日 | 失敗 |
「みょうこう」 | 平成21年10月28日 | 成功 |
「きりしま」 | 平成22年10月29日 | 成功 |
ちょうかいは迎撃に失敗しています。
本番では、さらに困難な環境での迎撃となります。
やはり、弾道ミサイルは脅威なのですね。
イージス艦だけでは守りきれない
2015年現在では、イージス艦が担う「弾道ミサイル防衛」の役割がさらに大きくなっています。
しかし、イージス艦が弾道ミサイル防衛を行う場合は、低空の対空防御が手薄になります。
あきづき型汎用護衛艦と役割分担
2012年に就役した最新汎用護衛艦の「あきづき型」は対空防御に優れています。
イージス艦が弾道ミサイルの迎撃を行う場面では、「あきづき型」の僚艦が艦隊の対空防衛を担います。
各護衛艦隊は、これらを考慮して編成されています。
一番怖い兵器は「長距離弾道ミサイル」
北朝鮮の脅威として「弾道ミサイル」の存在が挙げられます。
「テポドン」のニュースなんかもよく耳にしますが、そんなに騒ぐことなのでしょうか?
弾道ミサイルの迎撃は困難。
「北朝鮮のミサイルなんて怖くないよ!」と思っていたあなた、それは大間違いです。
最新技術を駆使しても、迎撃は非常に困難です。
通常のミサイルとは違う!
対艦ミサイルや巡航ミサイルは自分で横に飛んでくるミサイルです。
ちょっと邪魔をすればコースをそれますし、比較的、簡単に迎撃できます。
ありえないスピードの弾道ミサイル
しかし、弾道ミサイルは、たかーく打ち上げて放物線を描いて自由落下してくるミサイルです。
「中距離弾道ミサイル」や「大陸間弾道ミサイル」のように射程が長くなればなるほどスピードも速くなります。
その速度はマッハ10~マッハ20というものすごいスピードです。
大気圏外まで上昇して、真上から落ちてきます。
※マッハ1は音の伝わる速さの事(秒速360mくらい)
秒速にすると?
「3km/秒」~「6km/秒」です。
時速にすると?
「2万km/h」以上です。
最速の戦闘機で追いつける?
最速の戦闘機はマッハ2~3程度です。
弾道ミサイルのスピードは、戦闘機の10倍にもなります。
追いつけません。
手も足もでません。
イージス艦は弾道ミサイル防衛の砦
弾道ミサイル防衛(BMD)システムの概要
現在の日本の弾道ミサイル防衛システムは以下のイメージです。
弾道ミサイルの迎撃方法は2種類
方法は以下の2つです。
- 海上自衛隊のイージス艦からの「SM-3」での迎撃
- 航空自衛隊のペトリオットから発射する「PAC-3」での迎撃
※アメリカにはPAC-3より高高度で迎撃できる「THAAD」も配備されていますが、日本には導入されていません
イージス艦のSM-3で大気圏外にて迎撃
現在、こんごう型イージス艦は、この弾道ミサイルを大気圏外で迎撃する能力を持っています。
迎撃には弾道ミサイル迎撃用のSM-3が用いられます。
失敗したらPAC-3で迎え撃つ
ちなみに、何発か飛んできた場合、SM-3で完全に迎撃するのは無理のようです。
その場合、打ち漏らした弾道ミサイルは地上配備のPAC-3(ペトリオット能力改善3型)で迎撃します。
通常パトリオットと呼ばれるやつですね。
地上にて「航空機」や「弾道ミサイル」を迎撃するための航空自衛隊の装備です。
理想はSM-3での高高度(大気圏外など)での迎撃です。
PAC-3での迎撃は、着弾直前の低高度なので、迎撃できたとしても被害が出ます。
発射直後、もしくは弾道の頂上付近での迎撃が現実的です。
ターミナルフェーズと言われる着弾直前でのPAC-3での迎撃は、一か八かといった感じでしょう。
弾道ミサイルの種類
距離や発射方法によって以下のものがあります。
- 短距離弾道ミサイル(SRBM)
- 準中距離弾道ミサイル(MRBM)
- 中距離弾道ミサイル(IRBM)
- 大陸間弾道ミサイル(ICBM)
- 潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)
中距離弾道ミサイル(IRBM)位までなら大丈夫ですが、最新のイージス艦の「弾道ミサイル防衛システム」でも、ICBMやSLBMの迎撃はほぼ不可能とされています。
なんだか、最新技術のアメリカや日本なら、弾道ミサイルを打たれても迎撃できるイメージがありませんでしたか?
実は、防御困難なんです。
特に大陸間弾道ミサイルは、打たれたら被害は免れないのです。
北朝鮮への状況
北朝鮮はノドンやテポドン1号などの中距離弾道ミサイルを持っています。
さらにはテポドン2号などの大陸間弾道ミサイルに近いものも開発しています。
実験とは違い、いつ、どこから打つか分からないテポドンを見つけ、迎撃するのは至難のワザです。
北朝鮮から日本だと、発射から10分足らずでミサイルが着弾しますから。
日本政府が北朝鮮の弾道ミサイルに過敏になるのは、それなりの理由があるのですね。
打たれる前に打つ手はあるか?
通常、大国同士は「こっちも弾道ミサイル打つぞ!」と牽制して発射をやめさせるしかないんですね。
でも、日本は長距離弾道ミサイルも巡航ミサイルも持っていません。
持ったほうが良いとは言いませんが、抑止力が働きにくいのは事実です。
究極の迎撃方法
アメリカは人工衛星を使って北朝鮮や中国のミサイルの発射兆候を監視し続けています。
いよいよ発射されそうという場合は、警告したり、先制攻撃で発射台を叩きます。
これが一番の迎撃方法です。
コレをやろうと思ったら何が必要でしょうか?
アメリカとの連携が必要
日本は、アメリカから情報をもらい有事に備えるしかありません。
韓国との連携も必要かもしれません。
現実的には北朝鮮が崩壊して、ヤケになってミサイルを発射するなんてシナリオが一番怖いですよね。
さらに、北朝鮮は潜水艦からのミサイル発射実験も行っているようです。
潜水艦から打たれたら、さらに発見が難しいため、迎撃は困難でしょう。
日本はとにかく情報収集が最優先です。
アメリカと緊密に連携しなければ、単独での防衛は厳しいんじゃないでしょうか。
海上自衛隊のイージス艦
日本では、イージス艦は6隻就役しています。(2015年時点)
以下のとおりです。
こんごう型護衛艦
- DDG-173 こんごう
- DDG-174 きりしま
- DDG-175 みょうこう
- DDG-176 ちょうかい
あたご型護衛艦
- DDG-177 あたご
- DDG-178 あしがら
※DDGは「ミサイル護衛艦」を意味する記号です。
イージス艦の外見の特徴
番号が173~178番である
イージス艦の艦艇番号は173~178です。
「SPY-1レーダー」が搭載されている
イージスシステムの中核を担う装備は「SPY-1レーダー」といわれるレーダーです。
6角形の平たい板のようなレーダーが、艦橋の4面に1台ずつ取り付けられています。
イージス艦と他の護衛艦を見分けるのに、一番分かりやすい特徴です。
イージス艦の導入国について
現在、イージス艦を保有するのは、開発国のアメリカのほか、日本、スペイン、ノルウェー、オーストラリア、韓国です。
日本は、アメリカに次いで2番目に導入しています。
最後に!
佐世保は海上自衛隊の6隻のイージス艦の内、3隻が係留されているイージス艦のメッカなんですよ。
横須賀よりも多いんですよ!
※横須賀にはアメリカのイージス艦がたくさんいますが・・・。
佐世保港で「SPY-1レーダー」を装備した173~178番の護衛艦を発見したら、それはイージス艦です!
佐世保にお越しの際は「弾道ミサイルを迎撃できる頼もしいイージス艦」を生で見てください!
事前に勉強しておけば、さらにワクワクすること間違いなしです。
イージス艦入門 最強防空システム搭載艦のすべて ミリタリー選書
ではまた。
出典:イージスシステム(ウィキペディア)
出典:自衛隊ホームページ
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